2009年11月27日金曜日

大統領とコネがある人以外はディプロムを

ちょっと貧血気味で、朝が少しつらいです。血の気のある身近な出来事を一つ。



Union nationale des étudiants de France(UNEF)


パリ13大学のセミナーに出たときに、大学の前のバス停で大変目につくポスターがありました。


学生連合組合は学生が連帯して、学生の権利を主張したり、大学改革に反対するストを起こしたりします。日本ではあり得ないくらいのかなりどぎつい主張のこもったポスターが学生運動の元気な大学にはよく見られます。彼らにとって保守派政党のトップであるサルコジ大統領は何よりの敵です。

今回のポスターは最近話題になった23歳の大学生で大統領息子のジャン・サルコジ氏のラデフォンスの地区整備公社l'EPADの次期官庁への次期就任をめぐっての痛烈な批判です。まあ、2年ほど市の幹部をやっていたとはいえ、大学2年生に在学中にこのようなポストあきらかにコネなので、学生のみにとどまらず、市民から「納得できん」という多くの批判にさらされて、結局自ら辞退することになったようです。

関連記事フィガロ(仏)

今回のはジャン・サルコジ氏の顔がばーん、と出ていて、


仕事を見つけるならサルコジに連絡しよう!

年齢:23歳
学歴:学士2年目
給料:月8500ユーロ
推薦者:サルコジ大統領

他のすべての学生のために、高等教育機関を民主化しよう。
(わたしが見たポスターには「他のすべての学生は、高等教育機関のディプロムをとりましょう」とありました。)

一番下に、「あなたもニコラ・サルコジに志願書を送ろう!unef.frに連絡を」

とあって、unefのページにいくと、サルコジ大統領に彼の息子と同じ長官ポストへの志願書を送りつけられるページがあり、志願書の前文を読むことがえきます。内容をざっと読んでみると

「大統領殿、ディプロム取得状況とは裏腹に、若者の失業率は28パーセントにもなっています。自分は学位取得が一番よい方法と信じ、経済的な苦しさを乗り越えてディプロムをとりました。それでも研修や短期契約のポストしか見つかりません。でも、先日もっとよいほかの方法をみつけました。それは、推薦されることです!。あなたは求職者を支える力があるように思われます。 ジャン・サルコジ氏になされたeラデフォンスの整備公社長官へのポスト提案は私にとって興味深いです。私は高等教育 機関のディプロム取得したのでをあなたにこれを渡すチャンスがあります。月8500ユーロの給与は今の状況からまちがいなく抜け出せるし独立した住居も見 つけられます。普通は雇用者は私たちにディプロムを求めるし、短期契約の仕事つくのにだってたくさんの経験を求めます。でもあなたの介入のおかげで、以後は ディプロムと経験がなくても・・・・」

等々好き放題彼らの主張が書かれてあり、学生ならではユーモアと皮肉満載でかなり笑えます。


経済的な困難にも負けずに学位を取った、という一文は日本の大学のべらぼうに高~い学費からすると、だれでも無料で入れる大学の制度があるのに経済的なつらさを訴えるなんて、要求しすぎでは?と見える部分ですが、いわゆる「成功者、勝ち組」になるための切符であるグランゼコールでの就学に関しては、学校によってはそれなりに親の収入がないと払えない額を払わなければはいれなかったり、社会階層によってほとんど生まれたときからグランゼコールにいくようなコースを歩むことが不可能だったりするので、そういった大学以上のすべての高等教育機関社会格差、不平等にたいする不満がこめられているのです。

フランスのグランゼコールについて
日本ではフランスのグランゼコールの位置づけについてはまだあまり知られていません。フランスの大学というと、日本人に思い浮かぶのは多分「ソルボンヌ大学」と呼ばれるカルチェラタンの大学でしょう。しばしば、ネット上でもソルボンヌ大学がフランスの最高峰の教育機関であるかのようにたかく評価されているのをしばしば目にします。しかし、実はフランスの大学というのはバカロレアという高校卒業時期に受ける試験に合格した学生は、どの大学にも受け入れてもらえます。学部の得意分野、伝統もありますから、なにを基準に見るかによるかと思いますが、ナポレオンの時代から、フランスの社会の重要どことを担うのはグランゼコールの卒業生と決まっています。そして、このグランゼコールに入学するには、日本以上に厳しいともいえる選抜に勝ち抜かないといけません。「エリート」育成に関して言えば、超競争社会です。学費は学校によりますが商業やMBAなどは日本の大学以上に高いところもあります。今詳しくは確認しないのではっきりいいませんが、年間数十万円とか、学校によっては100万円、200万円とかするところもありと聞きます。フランスでは、「国民すべての人に等しく学ぶ機会を」をスローガンにすべての国立の教育機関の授業料を無料としていますが、じつはフランスの社会を動かすエリートへの道は大学にはほぼ皆無といってよく、ごくごく限られた人にしかその道は開かれていません。

話の方向がそれました。フランスの教育システムについてはまたの機会にまた詳しく触れたいと思います。とにかく普通の学生が声を上げるというのは日本では68年の学生運動以降ほとんどないことですが、ここフランスでは共産主義がまだまだ左の代表として普通の大学生の味方的な印象があり活発に活動しています。去年の大規模な大学改革の余波もあり、学生が政府に声をあげるということがいたって日常の風景としてあります。

日本はというと、世襲議員ばかりの政界、政治に無関心な若者たち。「親の七光りは許さん!」と学生が徒党を組んで主張をする、というこはまずあり得ないですね。学生連合組合のストには極端で暴力的な活動を指揮するコミュニストとのつながりがあることなど指摘されていて、決してそれらすべてを肯定、援護するものではありませんが、「どうせ変わらない」「自分には関係ない」と言う声がすぐに聞こえてきそうな日本の若者(自分も日本人で若者ですが棚にあげます)には、血の気の多いフランスの若者のエネルギーを空輸して注射したいくらいです。新型インフルエンザにも勝てるかも。

そんなことを思いながら最寄の駅に着くと、駅前の献血カーがとまっていて、寒い中、カフェを一杯やっているフランス人達が列をなしていました。

「ただでさえ寒くてエネルギー使うのに他の人に渡す分の血があるなんて、やっぱり体力あるな。しかも外で立って待つの無理~。」

なんてふらふらしながら「血」の違いを感じたのでした。

輸血でもしたら私もちょっとフランス人っぽくなるんでしょうか・・・。



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