2010年2月17日水曜日

フランスの愛の表現。




ときどきシッターをしている近所のフランス人家庭の話を織り交ぜつつフランスの愛情表現にまつわることを思いつくまま書いてみます。


月に一度くらい夜のシッターを頼まれて、帰りはご主人の車で自宅まで送ってもらうんですが、いつも奥さんのことを非常に立てるのがすごくフランスらしいです。

「うちはレギュラーではシッターは必要ないんだけど、僕の奥さんも家の仕事ばかりじゃ嫌になってくると思うんだ。何もなくてもときどきは妻と二人で映画を見に行ったり出かけたりすることにしてるんだよ。」

とか

「あいつは料理がとてもうまいんですよ。」

とか

さらっと言うので、毎回軽く感動します(笑)。


謙虚な日本と主張するフランス

日本では身内のことを外の人に対してよく言うのははばかられる傾向にありますね。たとえ、美人で才女な妻だと自覚していたとしても「うちの嫁は美人で賢くて素晴らしいんです」なんていったら嫌味に聞こえるので言いません。日本は謙虚さ、控えめさが評価されるからです。

フランスで「うちの愚妻が」などといったら「まじで?じゃあなんで付き合ってるの?」と変な顔をされると思います。妻と夫はお互いに尊敬しあい深く理解しあい、愛し合っているというのが理想の姿で、
そういう片割れをもっているということが人間的にも評価されるというわけです。

ですからセレブな有名人のインタビュー記事などでも

「相手との関係を学ぶなかで、自分の仕事に対する姿勢もこんな風に変わっていって今のわたしがあるの。ピエールはわたしのすべてといっても嘘じゃないわ」

みたいなフレーズがしょっちゅう飛び出すんです。カップルがお互いを褒めあう姿はテレビでもよく目にします。

誰かを愛することで尊敬しあうことや理解しあうことなど人として大切なことを学ぶと考える人たちに、パートナーをこき下ろすようなことを第三者に言うのは、だから逆にあまり理解されません。フランスでは独身者は「愛を知らない人」で「人間として未熟」という感覚が社会に無意識に埋め込まれています。イギリス人でフランスに長友人の男性は、税制の優遇などで実利的にも独身は損をする社会だと言っていました。フランスはカップル社会と呼ばれる所以です。

フランスのバレンタイン

2月の24日はサント・バランタン(聖バレンタイン)。この国では日本と逆で、男性が女性にプレゼントや花束を渡して愛を伝える日です。デパートのアクセサリー売り場はカップルでごった返します。プレゼントはチョコレートのほかにも香水やアクセサリーが人気です。花束はバラ。チョコだけを渡すイメージのある日本とちがって、カップルが花束を飾って素敵なディナーをして男性が女性にプレゼントを渡す、という愛でいっぱいの日をすごす日という感じです。メトロには普段よりもたくさん花売りが立ちます。メトロの入り口でもらえるフリーペーパーはバレンタイン特集で、数ページにわたってパートナーへの愛のメッセージが掲載されていました。「あなたがわたしの人生にきてから3年になるわ。一生一緒にいたい。愛してる。」「君が僕のすべて、君のいない僕は僕じゃない。」というような情熱的な愛の言葉でいっぱいで、フランス人たちがどんな言葉で愛を告白するのかわかって面白かったのですが、一番関心するのは子どもを持つ人がそういう愛の言葉をパートナーに向かって書いているものがいくつもあることでした。


「ラブレターもらったことある?」40歳、弁護士

去年のこと。私がシッターをしていた仏家庭が突然離婚を決めて私は急に仕事をなくしたことがあります。奥さんは弁護士で非常にかっこいいキャリアウーマンでした。小学校前の小さい子どもが二人。意を決しての離婚の理由を語ってくれたのですが「megはラブレターをもらったことある?私の夫はラブレターをくれたことが一度もないのよ。愛してると言ってくれないのよ。結婚して10年になるけれど、もう耐えられない。」と涙ながらに語ってくれて私はとても驚いたのを覚えています。旦那さんはたしかに恥ずかしがりなタイプなんですが、それでも娘が幼稚園で作った「パパ大好き」と書いたTシャツを着て毎日近所をジョギングしているので、奥さんは彼のことをそういうかわいい人だと理解しているんだな、と勝手に良い夫婦像を抱いていたのでびっくりしたのでした。子どものためになんとかやり直そう、とか我慢しようというよりも、カップルの愛の問題が一番重要な問題です。親が幸せでなければ子どもにもよくないという考え方がみられます。離婚率が高いのにどうして愛の国と呼ばれるの?という質問には、愛の国だからこそ、愛がなくなったらすぐおしまいになるから、と答えることができるかもしれません。

私はこれらを書き出して、日本と違ってフランスって素敵、といいたいわけではありません。こういうことを体験するのがすごく面白く、興味深いと思っています。学校ではフランスの離婚率の高さや家族制度の歴史などの講義を聞き、仕事ではフランス人の家庭に入ってその実情を実に生々しく体験しています。理論と実践とのバランスをとるというのは研究をする上でも大事にしたいことです。


























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