とても前衛的で、まるでモダンバレエを見た後みたいな気持ちになるすごく現代的な声楽コンサートでこんなのはじめて。大変すばらしかった。
40人の歌手がずらっと教会の内側を輪になるようにしてならび、一人ずつ発声していくのからはじまり、タップや太鼓、顔の表情やしぐさなどでの表現もあり、私の考える教会の声楽コンサートの枠を思いっきりはずしてくれました。もう声楽コンサートというより人の声をつかった一大スペクタクルといった感じでした。
北の郊外というと犯罪や貧困などどず黒いイメージが付きまといますが、実は最近ではワールドミュージックやモダン芸術に力をいれている地区でもあります。不良のイメージばかり強い地域の若者を生き生きとした芸術の場に巻き込んでいこうとする感じ、パリの郊外という言葉に付きまとう暗いイメージを払式しようという意気込みが感じられ、文化の面では大変興味深い地区です。私の大学もこの地区にあり、映画の実践やお芝居やモダンダンスウェブデザインなどを得意とする芸術学部が一番の人気です。新しく作られた町だけに、伝統や歴史に縛られない前衛的な芸術が得意です。
今週はこの地区での音楽イベントをを担当する男性が生涯教育をテーマにするセミナーにゲストスピーカーできていたので開演を待ちながら友達と異文化受容における音楽の有用性について盛り上がりました。友達は50代の青い目の女性です。ソプラノの日本人とお友達で、唯一の日本人であるクラスメイトの私を誘ってくれました。
現代のフランス芸術
日本人が観光に来る際にはパリ観光といえばなにを差し置いてもはずせないのはルーブル美術館とオルセー、そしてオランジュリー、がんばってポンピドゥーセンターといった感じでしょう。でも今のフランスを知りたいなら、社会科の教科書でもみられるようなモナリザやサモトラケのニケなど有名どころを見て行ったつもりになるよりも小さなギャラリーをめぐったり、町の教会のコンサートにいったりするほうがずっとずっと興味深いです。概して働き者の日本人は長いお休みを取るのが大変なのでダイジェスト的に見て回ることになるので残念です。せっかくフランスにくるならゆっくり休みをとって一日くらい無名のギャラリーにもゆっくり足を伸ばせたほうがいいと思います。過去の有名な作品たちは言ったら「蝉の抜け殻」のようなもので、ものめずらしい抜け殻の標本もそれなりに興味深いですが、生きて躍動するもののほうが今に生きる私たちの心にリアルに迫ってくるものではないでしょうか。
パリ郊外のイメージ?
1950年から75年にかけてパリの北側の郊外には写真のような無機質なマンションがたくさん建設されました。多くは移民の人や低所得の人が住むHLMという公共住宅です。都市部の蔓延的な住宅不足と都市部の労働者の増加が主な理由です。経済復興のために国は元植民地の北アフリカやアフリカから多くの労働者を呼びました。フランス人がやりたくない仕事を低賃金で引き受けている人の多くが彼らです。ニューヨークと違って繁華街からかなりはなれたところに位置しているので普通は観光客がまちがっても迷いこむことのない場所ですが、現代のパリのかかえる社会現象を象徴するものすべてがここにあるといってもいいくらいです。パリの郊外というのは移民政策の是非や宗教問題、教育問題と結び付けられて、特別な意味を包含しています。貧民街と同じニュアンスをだれもが感じる郊外という言葉ですが、当事者たちを配慮してなのか、国の移民政策の行き着く先を貧民街と表現したくないだけなのか、センシティヴな地域という表現をよくされています。
コンサート会場の教会は写真の通りやはりこれまた現代的。くもの巣がイエスを守ったという洞窟を模した説教台とモダンな十字架とステンドグラス。40人の歌手たちが教会をとりかこむようにしてずらりと並び、一番端からひとりずつ発声していくのからはじまりました。
Tomas Tallis, (1505-1585), Spem in alium
-Motet à 40voix (8choeurs à 5voix)-
Benjamin Britten (1913-1976) - Eight Sacred and Profane lyrics songs op.91
Gyorgy Ligeti (1923-2006) -Trois Etudes hongroises
Bélà Bartok (1881-1945) - Quatre chants populaires hongrois
Peter Eotvos (1944-Hongrie) -Drei madrigalkomodien
Zad Moultaka (1967-Liban) -Cadavre exquis
また是非聞きに行きたいです。
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