今日は庭で大きなダンボールで盾のようなものをつくったらしく、みんな持ち帰っていた。マリンは誰か他の子か先生に描いてもらったらしいが、それでも自分で作ったかのようにご機嫌。
ピクニック帰りの他のクラスの子どもたちがお兄さんとともに保育所に戻ってくるのに出くわすたびにかわいいね、などと声をかけてもらい、更に満足。
道路で大きな鳥の羽ととんでもなく大きな松ぼっくりまで見つけてもうニコニコ。そう、ここまではいたって快調だった。
ところが・・・
何気なく私の肩にかかったリュックを見ていきなり大泣き、というか軽くパニック状態。
何事??
「そのリュック、私のじゃないよ~!!」
二つともマリンのフックにかけてあったので、一つは今日行ってきたというプールの用具だろう、と中を確かめなかったのだが、中を開けると男の子用の水着がでてきた。
間違って他の子のリュックまでもってきてしまったのだ。
でも自分のものが無くなったわけでもないのになんでそんなにひどく泣くの?と私びっくり。
ねえ、マリン、それでどうしてそんなに泣いてるの~?
するとマリン
「違う人のもってきちゃったら泥棒になっちゃう~!すぐに返さないと~!!」
私「!!」
「他の人のものをとったら泥棒になる。牢屋に閉じ込められる。」
きっとご両親にそのように言い聞かせられてきたので、自分が泥棒になってしまう、と本気で心配になったのだと思われる。
ちなみにマリンはシュタイナーの4つの気質に当てはめるとまさに典型的な憂鬱質だ。
(以下憂鬱質の人の特徴)
言葉使いと態度はゆっくりしていて慎重 ・非常に冷静で内向的、また良心的 ・自分に対してすごく関心がある ・細い線で、うすく、小さいきれいな字を書く | ・探求心がつよい ・懐疑的な態度 ・注意力が発達している ・独創性に徹しており、想像力が豊か ・固定観念にとらわれがち | ・外の世界に対して客観的 ・内部に深い世界を担っている ・非社交的で孤独 ・人間嫌い | 持続力がある |
シュタイナー 4つの気質 (とても興味深いです)
http://www2.u-netsurf.ne.jp/~kazumixx/steiner-19-1.htm
親が子どもに犯罪者になってほしくないのは当たり前なことだけれど、ただでさえ固定観念にとらわれがちで親の職業が弁護士だったりするマリンは、普通に愛情を受けて育てば、どうしたって泥棒なんかになれそうにないタイプなのだ。
でも彼女はとても真面目で善良な人なので、もし自分の絶対的な人に
「そんなことをしたら泥棒になる」
なんて言われたら彼女は
「自分が泥棒になってしまう可能性がある人だ」
と本気で信じて、自分に秘められたその恐ろしい可能性に囚われてしまう。
このタイプは内面に独自な独特な世界をもっているので、例えば他の人から見ればとるに足りない事柄の中にも、自分で自分の罪をわざわざ見つけ出してしまうことだってある。
誰にも手の届かない心の奥底で一人罪の意識と孤独に戦っているのだが、周りからはなかなか理解されない。
「お母さんはあなたが罪に問われるような悪いことは絶対にしないと信じてる」
そういう気持ちが伝わるような言葉をかけてもらったらどんなに安心か。
親や教師がその子の気質を的確に捉えて、個々の子どもに適した方法でアプローチしないと子どもの健やかな育ちの障害になるばかりだ。
とにかく私はマリンの顔と同じ高さにしゃがみこんで
私がリュックを間違えたのだからマリンはなにも悪いことはしてないこと
リュックの持ち主に電話をかけて事情を話せば大丈夫だということ
マリンは優しい子だから泥棒なんかにはならないということ
をマリンに話した。
私の鞄に入っていたようかんとカステラのお菓子を一つあげると落ち着きをとりもどした。
お菓子を「半分は妹のユナにあげる」といってまた歩き出した。
安心な状態のとき、この子はとても優しいのだ。
なんとか無事妹の通っているクレッシュ(保育所)のお迎えに間に合った。
(いつもこんな風なので大人の足で15分の道のりも最低40分かかる。せかすのが嫌なので、ゆっくりあるいてもクレッシュの閉まる時間に間に合うように、最近は20分前にはお迎えに行っている。早めに迎えに来て大正解。)
クレッシュの帰り道はユナとマリンでめずらしくごっこ遊び。
明朝に備えてテントとテーブルが並んだマルシェ通りで八百屋ごっこ。
これはフランスならではのごっこだなぁ、とちょっと楽しくなって私もお客さんになっていろいろ買う。
「ムッシューマリン、~~シルブプレ」というと何でも無料でくれる。太っ腹だ。
アイスクリームまで売ってくれた。
八百屋でもアイスが買えるのはとても便利だ。私はヌテラ味を注文。
ひとしきり遊んだ後家に帰って夕食。
珍しく残さず食べるたマリン。
ママンから珍しく電話がかかって「大きい子みたいに食べた」と誇らしげに報告。
今日は総合ご機嫌度60点というところか。
一方ユナはクレッシュの椅子からひっくり返り頭をぶつけて意気消沈。
食事が終わる前にデザートを欲しがったので、帰ってきたお父さんにいきなり怒られる。
ああ、かわいそうに。いつもよく食べてるんだし、まだ頭がちょっと痛いみたいだしいいのにそれくらい。
私の胸が一番痛くなる瞬間はこんなときだ。
それなのに私がお迎えに行くとき、ユナがわたしにビズ(挨拶のキス)をいつもしないことを知ると、なんだかうれしそうな表情のお父さん。(お父さんが帰宅すると2人とも大喜びなので。)疲れているところに
他人、しかも外国人が迎えにくるのだから、うれしくなくって当然なのだが。かなりひねくれ者である。
でもフランスの子育てって大抵こんな感じなので、この父親も他の方法を知らないから自分がされたようにしか実践できないというのもあるだろう。この子たちは繊細なところがあるので、かなり上手くいかない場面も多いはず。もしかすると私には見せないけれど悩んだり不安だったりするのかもしれない。
しっかり自分の意見を持っていることがよし、とされるこの国ではそんな子育ての不安を友達家族に打ち明けるなんてこともやりずらいのかもしれない。この父親に関してだけ言えば、少々の不安は自分のやり方を強引に押し通すことでなかったことにしてしまっている。そんな気がする。
保育施設からの帰り道はさながら「哲学の道」。夕食を食べるまでの一時間半のなかにいろいろなドラマがある。
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