少し前になりますが、4月の初めに、ゴッホが最後に住んだ村、オーヴェル・シュル・オワーズに行ってきました。駅からすぐの公園には絵の具箱とカンバスを十字がけにした、よれよれの服を着たザッキン作のゴッホ像がありました。
ゴッホが描いたのと同じ場所にその作品のパネルが立っていて、ゴッホが描いた当時の風景と現在の風景を見比べることができるようになっています。主要なところは駅付近にかたまっているので歩きでも十分楽しめますが、私は自転車で行ったので、かなり遠くのゆかりの地まで見に行くことができました。
ゴッホは、弟のテオ、ゴーギャンにたくさんの手紙を書いたそうです。ゴッホの家を訪れたときに、それらの内容の一部とともに、ゴッホの絵を見せてくれるビデオをみたのですが、一番終わりに
「私が望むように世界が変化していくならば、これから人間はもっと音楽的になっていく、つまり、色彩の本質について人々は考えるようになるだろう」
という手紙の一節が紹介されました。(私の記憶をたよりに書いているので、このフレーズそのままではないのですが)いろいろな色の毛糸を組み合わせることで絵の色彩配置を考えていた、というのを知るにつけても、ゴッホが非常に色彩の本質について深く考えていたことを思います。
「ひまわり」に代表されるように、ゴッホはとくに黄色に強いこだわりをもち、「私の黄色で世界が変わる」
と言ったそうです。そのような彼の色彩感覚にはどこかゲーテの色彩論に重なるものがあるような気がしました。というのも、ゲーテの色彩論においては最も「光」に近い色がこの黄色だからです。
とけれども、オワーズで描いた絵は光よりも闇にとらわれるゴッホが表れていました。
ゴッホがオワーズの村に来たのは、病ををひどくさせるばかりの喧騒のパリを離れ、画家の友人を多く持つガシェ医師による治療を受けながら、絵を描き続けるためでした。
ゴッホによるガシェ医師の肖像画。このパネルは医師の住んでいたところで見つけられます。この日は閉館していました。この絵は日本の企業がものすごい値段で買い取ったけれど、現在は行方不明になっているそうです。
ここでゴッホは毎日一つという超ハイペースで絵を描いたらしいのですが、ここでの代表作として知られる教会の絵や麦畑の絵は濃い青の空が暗くただならぬ不気味な雰囲気です。
ゴッホの麦畑。これが最期の作品。この麦畑でピストル自殺をはかったものの、死に切れず、ラブー亭の上で数日苦しみもだえ、最期はテオに見取られながら亡くなったそうです。そのテオも精神を病んで、その後を追うように亡くなり、麦畑の端にあるお墓には弟のテオと並んでゴッホのお墓があります。二人のお墓には黄色い花がたむけられていました。
ラヴー亭というレストラン(今も営業中)の上の彼の部屋も見学できたのですが、小さな天窓があるばかりのとても狭い部屋で、あまり楽しい気分になれそうにない部屋でした。パリよりはずっと平安に暮らせたのだろうけれど、弟の仕送りに頼らずにはそこでも生きることが難しかったわけだし、世の中から隅に追いやられてしまったような虚無感も感じていたんじゃないかと思います。
ゴッホが書いた手紙はいったいどういうものだったのか、もっと知りたくなりました。日本語訳もでているので、いつか読んでみたいと思います。結局生涯画家としての日の目をみることなく、弟以外に理解者はなく、自ら「光」を絶ったゴッホの生涯に思いを馳せた一日でした。
関連ページ
フランス政府観光局オフィシャルサイトオーヴェルシュルオワーズ(日本語)
http://jp.franceguide.com/home.html?nodeID=120&EditoID=33378
ゴッホの家・ラブー亭http://www.maisondevangogh.fr/uk/navigation.htm
アルルのゴッホhttp://wp1.fuchu.jp/~zenshoji/danna_g3.htm
5 件のコメント:
ご無沙汰です。
うらやましいですね。
ヨーロッパは陸続きで色んな所に行けて。
ゴッホは日本では一番人気の作家ですが、海外ではどうなのでしょうか?
いつもコメントを書こうと思っているのですが、マックのOS9では書くことができず、OSXに立ち上げ直した時にやっと書けるので、久しぶりにコメントしています。
kazoo320
お久しぶりです。ものめずらしくていろいろ出かけていますが、外にいると日本国内を意外と旅していないことに気づきます。ゴッホはフランスでももちろん有名なんですが、美術館に出かけて絵画をみにいくフランス人は美術の学生くらいのようです。
マックのOS9からはコメントできないんですね。ご報告ありがとうございます。ちなみにお使いのブラウザはどちらのですか?右上の自己紹介欄にメールアドレスをのせようとおもいます。またコメントお待ちしています!
2009/05/08 6:26
教えていただいて有難うございます。こんなところにゴッホのおうちがあったなんて。
風景と絵が同時に見られるのですね!ゴッホを満喫するのによさそうです。
パリから電車で日帰りで行けます。キャンバスを置いて絵を描いていたであろうスポットに看板を置くとはなかなか粋な工夫ですよね。パトロンになってくれた医師の家も近くにあって、ゴッホ好きにはぜひおすすめしたいところです。
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