2009年5月25日月曜日

学校見学 パリのデクロリー学校

                外観改装中の幼稚園

4月23日(土)大学の授業で、フランスでは唯一という「デクロリーの学校」へ見学に行ってきました。登録している授業ではないのですが、今期、エコール・ヌーベルを見学しにいく授業があると聞いて、この授業の教授にメールして参加できることになりました。フランスの学校の授業を観察でき、とても貴重な経験になりました。

見学したのは中学生の授業と小・中学生対象の「親子のアトリエ」、幼稚園の保育室です。



8:30~9:30   中学一年生 歴史&地理 
9:30~10:30  中学三年生 数学
10:00~12:30 小学校4・5・6年生 「親子のアトリエ」 料理
13:00~     幼稚園見学

というプログラムでした。科学の授業を見た生徒もいました。

「デクロリー」は学校の創立者の名前です。フランスではパリ東南のヴァンセンヌの森に面した敷地に幼稚園から中学まであります。なによりも、子どもの興味・関心から学びを広げていくことを非常に重んじています。

デクロリーの学校は、実はベルギーが発祥で、ブリュッセルのウックル(Uccle)という地区に1907年創立の学校があります。モンテッソーリ、シュタイナー、A.Sニィルの学校と同じく、エコール・トラディショネル(伝統的な学校)に対して、エコール・ヌーベル(新しい学校)といわれています。公の学校(エコールプブリック)なので、授業料・保育料は無料です。ただし、ほかの地区から入学を志願するには、地区によっては申請料のようなものを払う必要があるそうです。普通、公立の学校は水・土は休みですが、ここは土曜日もアトリエ形式で授業があります。4年生まではアトリエひとつ(親のアトリエ?)5年生以上は二つのアトリエ(ひとつは教科のアトリエ、ひとつは親のアトリエ?)、中学生以上は二つの教科のアトリエとひとつの「親のアトリエ」があります。(以下、アトリエは「工房」とも訳しています。クラブ活動、課外授業にあたると思います。)

公の学校であり新しい学校というのはフランスでも大変珍しく、日本で中学まで一環の公立のシュタイナー学校ができるのと同じくらい画期的なことです。



アクセス

Metro8番線PORTE DOREEからヴァンセンヌの森に向かって歩くこと15分
移民博物館を通り過ぎ、46番のバス停、(動物園の駅)の前が学校の入り口です。向かい側にはヴァンセンヌの動物園の大きな岩山がみえます。ちなみに動物園は改装中でした。

中学校の授業

授業のやり方はわりと普通でした。驚いたのは先生がものすごく早口で、進行が早かったのと、建物がプレハブだったことに驚きました。幼稚園は重厚な石造りの立派な建物なので、これは予算の関係なのかもしれませんが、個人的にはこれは残念でした。

歴史・地理の授業

教科書は市販のもののようでした。一応公立学校なので当然といえば当然です。中学一年生の歴史・地理の授業は古代ギリシャの歴史の復習とヨーロッパ、特にパリの地理について学習していました。白地図の読み方の確認やセーヌの流に沿って右手が右岸、左手が左岸というのをやっていました。子どもたちは、まだ無邪気さが残る感じで、ほとんどの子が積極的に手を上げていました。

数学の授業

中学三年生ともなると、子どもたちもずっと大人っぽく、生徒たちの何人かは反抗期真っ只中といった感じを受けました。先生が黒板に問題を書いている間に友達に消しゴムを投げたり、携帯をいじったりする子がちらほらいました。授業の内容は連立方程式でした。先生の質問に手を上げる生徒は少なめで、理解度は低そうでした。先生も難しさを感じていて、授業のあとにいろいろお話ししてくれました。



「親の工房」

その名のとおり、この学校の生徒の親が先生になります。歌・映像・写真・ヨガ・料理などさまざまな種類から自分でやりたいものを選びます。1期間3ヶ月で、年に3つの工房に参加できます。4年生以下が一つ、5年生から二つの工房に参加できるようでした。私は料理の工房を見学しました。



料理の工房は人気なのか、二つのクラスがあり、小学生と中学生で分かれていました。私は小学生のクラスを見学しました。小学生の会場は幼稚園の一室でした。奥に台所があります。食材をもった子どもたたちがぱらぱらとやってきました。最初にやってきたのは卵を持ってきた女の子。あまり注意しなかったのか、2パックの卵のほとんどすべてが割れてしまっていました。(笑) 感心したのは、「どうやって使おうか?」と相談が始まったこと。「先生、割れちゃった、どうしよう?」ではなくて、壊れてしまった後、そこからどうするかというのをまず自分たちで考えようという自立した姿勢が見られたことです。

子どもの自主性を大切に

先生役のお母さんは

「食材はそれぞれ持ち寄るんだけど、忘れちゃう子もいるのよ。そういう時はあるもので何とかするわ。チキンなしのチキンカレーでもなんでもできるものを。」

といいます。子どもの自主性を大切にしているので、「次は気をつけなさい。」ということもどうやらなさそう。また、

「次回もって来る食材を最後に決めるけれど、自分の分担をノートをとる子もいれば、とらない子もいるわよ。書かない子は頭で覚えてるんじゃない?」

とも語ってくれました。

私の通った普通の公立小学校では「はい、みんな連絡帳をだして!宿題はこれとこれ、と書くんですよ。」と言われたものです。ここからもこの学校の理念が見えると思います。

料理の工房にはいつもはお母さんが二人いるそうなのですが、この日は一人で忙しそうでした。このクラスでは「分け合うこと・五感で感じること」を大切にしているそうです。タンドリーチキンに使うスパイスの香りを嗅いだり、それをヨーグルトに混ぜたものを味見するように声をかけていました。




驚いたのは、とくに担当があるわけではないのに、「なにをやればいいの?」と質問する子が一人もいなかったことです。どの子も家庭にいるようなすごくリラックスした様子で、おしゃべりを楽しみながらも、ちゃんと手は動かして、自主的にてきぱきと取り組んでいました。高学年だからなのかもしれませんが、これは僕がやる!などと言い合いになることもまったくなく、非常に和気藹々とした家庭的な雰囲気でした。



出来上がったサラダです。くりぬいたきゅうり(フランスのきゅうりはすごく大きい)にツナのマヨネーズ和えをつめてあります。フランスではもともと「いただきます」と声をそろえて一緒に食べ始める、という習慣がありません。配られた人からどんどん食べている光景は日本人としてはちょっと違和感がありです。あまったり、食べたくない人は家に持ち帰ります。食材の提供に協力してくれた家族とも分かち合うこともまたよし、というわけです。
メインのタンドリーチキン。隣に座っていた女の子が、「これ、辛いから気をつけてね!」と教えてくれたのですが、確かこの女の子、スパイスをそのまま味見して辛くて水道に水を飲みに走った子だったような気がします。ヨーグルトと混ぜて調理した後はほとんど辛くないのですが、材料にはかなり辛いスパイスが入っていることを知ったのは1から料理をしたからこそです。


この日のメニューは前菜にきゅうりとツナのサラダ、メインにタンドリーチキンとご飯、デザートにティラミスでした。フランス、インド、イタリア料理というインターナショナル、というかちぐはぐな各国料理のフルコース(笑)もちろん、メニューは毎回子どもたちのリクエストにより決めています。来週はムサカとスパゲテボロネーゼです。これもまた面白い組み合わせですが、先生役のお母さんは「同じ国の料理にそろえたら?」なんてことは言いません。

幼稚園見学


午後は幼稚園見学。この学校の先生と私の大学の教授の説明もありました。

学校のサイトでみつけた幼稚園の中の写真。ここは玄関でもあり、子どもの遊べるホールのような役目もするそうです。


幼稚園の連絡帳入れと連絡帳。色使いが激しい印象ですが、フランスの公立幼稚園ではラメ入りの絵の具などもよく好んで使っています。個人的にはもっとやわらかい色が好きです。


見学後、教師室の壁に貼ってある学校の理念を教授が私たち学生に説明しているところ。赤い字で、こども、中心、興味とあります。次に大きな緑の字は子どもの要求・親・教師とあります。子どもの興味・関心を中心に据えて、育ちを支えるために、親と教師の子どもに対する理解が必要だということでしょう。

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