2009年2月12日木曜日

フランスの大学改革とストライキ


フランスの大統領サルコジは2007年8月に大学改革を打ち出したことにより、大学の自律化が急速に進んでいます。

大学改革のストについて書いた理由

たまたま授業で大学の歴史を調査していたので、自分の大学の 変遷を含めて、フランスの大学改革のあゆみは興味があったこと、また、私の身近には研究者が以多いので、とても関心のあった話題が、このたびの自分の通う大学の本格的ストによっ て、自分のにとても近い問題になったことから取り上げようと思いました。


フランスの大学改革

世界ランキングにおいて遅れをとるフランスの大学の水準を引き上げようと、ここ数年来、研究教育活動の効率化を図るために、「研究と高等教育の拠 点」(Pres: Pôles de recherche et d’enseignement supérieur)や「先端研究の主題別ネットワーク」(RTRA: Réseaux thématiques de recherche avancée)といった施策が実施されてきた。大学の自律化を経た今年、高等教育研究省は「キャンパス計画(Plan Campus)」を打ち上げ、全国に10の「卓越したキャンパス(un campus d’excellence)」を新たに創設するとした。国営の電力・ガス会社EDFの一部を民営化して得られた資金をもとに、「キャンパス計画」には39 億ユーロ(約5000億円)が投入されることになる。従来の大学施設の選択と集中を促進する抜本的で大規模な大学改革である。【現地報告@パリ】キャンパス計画―フランスの大学改革http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/2008/11/post-149/


大学とストライキ

私の通うパリ8大学はこの大学改革に抵抗して今週からストが行われています。授業のある学期の最中にストがおこなわれるのは、かなりアクティブで本格的なストであることを意味するそうです

パリ8大学は数年前の大規模ストの発祥地であり、フランス の大学の中でもとりわけリベラルな学校で、(このリベラルな大学が国立であることが驚きですがこの点についてはいつかまた書きたいと思います。)今日は休講の授業がいくつかあったようでした。私が出席した授業では、授業そっちのけでストの主張を熱く語る先生の声が聞けたり、自分 の意見をもとめられたりすることがありました。私としてはとても興味深く、考えさせられることが多く、貴重な体験です。

皆いない、その訳は・・・

私はビラをもらっていたにもかかわらず授業の出席率がやけに低いのと、授業の登録をしに事務所に行ったときに耳にした情報でようやく今回のストの大きさに気づいたのでした。いつもなにかしらのマニフェスタシオン的な活動が学校のどこかで企画、実行されているので、今回もその1つだと思っていたのでした。

月曜日に配布されたビラによると主張は大きく3つとかかれていましたが、私が受けている授業を担当している先生(ドクターの学生でもある)は、このストの主張のとくに大きな二つの主張を授業の中で詳しく、そしてかなり熱をこめて語っていました。どちらにしてもサルコジの政策に対するとその施行によって引き起こされる問題についてのレジスタンスです

今回のストの大きな二つの主張

というのは簡単に言うと以下の懸念によるもののようです。

  1.  研究者や教師の地位の矮小化、ポストの不安定化、ひいてはそれらがもたらす授業の質の低下
  2. 企業から予算の得やすい経済、科学技術関連などすぐに国の富につながる学部が勢力を増す が、哲学や文系学部は経営が非常に困難になることが予想される、つまり大学間に階級ができ格差が大きくなる

学校の自治を国ではなく学校に任されるようになることで、学校はいかんせん、お金を自分でとりつけなくてはいけなくなります。お金があり、研究に専念できる分野では研究者はたくさんの本を出版できるようになります。ある先生は、それにともない、研究に専念する教授のかわりに、授業をたくさん請け負わなくてはいけない教授がその分野を教えることになり、自分の分野外のところも担うことになると、学生も特定の専門知識をもっている教授に出会うのが難しくなり、ひいては学びの質の低下も懸念される、というようなことをいっていました。

これら批判の声についても私が最近読んでいるブログがくわしいので同じソースからもう一度引用します。東京大学「共生のための国際哲学教育研究センター」のブログがフランスの大学改革について書いたエントリーです。

この大胆な計画には批判の声もあがる。この新自由主義的な施策は大学間の階層化を促進し、とくに大都市と地方の研究教育格差を助長するものだから だ。また、政府主導の大学改革は往々にして大学の体制順応主義的な体質を助長し、その批判的精神を減退させることで、学問の重要な生命力であるその独立性 を委縮させるからだ。しかし、大学ランキングにフランスの大学の存在感がないという焦燥感を打ち消し、研究教育の国際競争力を高めるという論理を説得する ことは難しかった。【現地報告@パリ】キャンパス計画―フランスの大学改革http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/2008/11/post-149/


フランスでも高学歴ワーキングプア

日本でも「高学歴ワーキングプア」ということがよく言われるようになっていますが、それと同じ現象がフランスでも起こりつつあるということです。


詩人や物書き、哲学者が一番ステイタスをもっていた国フランスで、文系科目が省みられなくなったら、いったいフランスのよさって何だろう?そう思っている文系学部の私にはこの大学改革の動きはとても残念でなりません。時代は移り変わるもの、総合的にみてフランスがもっとよくなるために考え抜かれた策だとしてもやはり残念です。とても残念。

ただ、フランスの人たちは黙っていません。主張します。そこに日本との大きな違いがみえます。絶対に泣き寝入りなんかしないのです。納得できなかったらとことん主張!これが普通、これが健全な精神だと思いますが、日本人の私はこの「希望を捨てない」社会参加のスピリッツを誰もがもっていることにいたく感動してしまいます。社会に参加し、自ら社会を変えようとする「社会力」が私たち日本人には決定的に欠けています。

ストライキは大学改革にともなう問題を皆に知ってもらうための意思表明でもあるので、少しくらい休講になっても仕方ないと思っています。



写真:メトロからの風景 バスティーユ付近からみたセーヌ河とエッフェル塔

2 件のコメント:

gussuri me-me さんのコメント...

フランスの底力はやはり旺盛な批判精神ですよね。日本の方が物も豊かかもしれないけれど精神の貧困さは一時帰国するたびに痛感します。金融危機の影響はフランスの方が大きいはずなのに、フランスでは日本ほど悲壮感がないのは、常に政府の社会政策を批判し続けてきたことで作られたセーフティネット(社会保障)のおかげな気がします。社会保障が変質を余儀なくされ、時代の流れがいかに一方向に向いていたとしても、そこで、ちゃんと理由を持ってノンと言える思考力の高さや思想の深さが卓越してるのだよね。そういう部分が大学改革で削られたら残念だけど、高校生でも自分の意見を持ってデモをするこの国に、これからもやっぱり期待したいところです。

meg さんのコメント...

そうよね。フランスは日本に比べて物質主義にとらわれてないように感じるし、自由(右)と平等(左)も健全に機能していると思います。学校のストを直に体験して、この勢いでフランス革命したんだろうな、と想像ができるくらい熱いものを感じてます。とくに今回は大学改革に対するストということで、教師や研究者がかなりがんばって抗議しているようですね。こういった自分たちの権利を主張する精神に日本人が見習うところは大きいと思います。いつも時代の流れに疑問をもつ視点を失わないフランス、思想の先端をいくのは現代でもやっぱりこの国、と私も大いに期待しています。

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