2010年5月5日水曜日

生涯教育と民衆教育


フランスの生涯学習の萌芽は、フランス革命期にさかのぼり、18世紀後半、コンドルセ(Condorcet,J. 1743-1794)の教育案の中には、すでに、学習による男女と年齢の平等、成人労働者の社会的・職業技術向上と教養向上のために一生涯知育継続の必要性についての言及がある。ヨーロッパの多くの国では、成人教育は、階級制度を背景に、民衆を無知から解放するといった農民、労働者の啓蒙教育といった側面を持ち、伝統的に民衆教育運動として各地で行われてきた。http://ejiten.javea.or.jp/content.php?c=TWpZd01ERTQ%3D


éducation populaire(日本語では民衆教育)はフランスの生涯教育について語るときに避けて通れないテーマです。民衆教育を対象とする研究のほぼ半分はわたしのいる教育科学部の領域でされています。


ただ、フランスの生涯教育を捕らえるのは日本人には結構障害が多いです。

なぜかというと日本で生涯教育というとスポーツ振興やカルチャースクールといった文化的なもののみをさすのが常識ですが、フランスで生涯教育=職業につながるような教育、労働者の教育なのです。
公教育に対するそれ以外の教育、とくに成人教育をさすことを前提として語られるのでそこをまず抑えないと、なんで?なんで?の連続です。この違いを深めていくだけでもかなり面白いです。

民衆教育とやらはもっとフランス的で、研究するにあたってはフランスの歴史的背景を知らないと理解に苦しみます。日本語の研究論文を元にフランスの民衆教育の歴史的背景を整理してみましょう。


  • 背景1 コンドルセ理論の再評価
  • 背景2 19世紀労働者運動の影響
  • 背景3 学校をめぐる規範主義と経験主義:マルクス主義対プルードン主義
  • 背景4 労働社会学 ジョルジュフリードマン homme producteur, techno-humanisme 1960-1970 生涯教育 フランス資本主義の近代化の進展、企業の教育、訓練


これらの背景を今につなげ、発展させるものとなったのが1971年法です。労働者の教育に関わる要求が明確な形をとる至りました。

以後成人教育は増加し90年代には70年代の4倍の成人教育が実施されるようになりました。

この71年法はそれまで民衆教育の包含していた

1、職業に関わる生涯教育

2、社会文化の活性化

という二つのテーマをはっきりと区別する役割としても働きました。

社会文化の活性化は70年代に議論が活発になりました。文化大臣マルローの文化政策抵抗する動きは68年の五月革命で爆発しました、マルローは下々の者たちにも崇高な文化というものを理解できるようにさせねばならん、という上から下に文化を教えてやる的な政策をすすめようとし、それに対して民衆たちは、われわれが文化の創造主だ、と主張したのです。

この頃は日本でも学生運動が盛り上がっていた時期ですが、こうした主張っていうのもあったんでしょうか?現在感じる限り、日本の民衆は芸術や文化は神棚に飾ってあがめるような向きがあるように思いますが。

社会文化の活性化はその担い手であるアニマトゥールの養成と公的補助が特徴です。しかしアニマトゥールの資格制度などの制度と反比例してフランスの民衆教育はじつは衰退気味です。関係者の高齢化と最近では移民に関する議論に関心がうつっていることが理由のようです。社会文化活性化は例えば日本の趣味やレジャー=生涯教育的な感覚をフランスでも生じさせてしまったらしく、もともとの根拠や目標を失わせてしまったという批判にさらされています。


そこで民衆教育団体の再評価の動きというのがあります。歴史的に担ってきた社会的公正の確立や民主主義を支える主体の形成、つまり存在意義の再確認が言われるようになっています。

私の研究のテーマのアソシエーションはこうした流れのなかに位置づけられます。

民衆教育団体としては「フランス教育同盟」や「民衆と文化」など活動家によって運営されてきたものが多くあります。

活動家はmillitantといってボランティアともまた区別されます。屈強な意思で民衆運動を先導する人々のことで、給料をもらっている人もいればもらっていないひともいるし、団体に属している人もいない人もいます。アソシエーションにおいてはボランティアを先導する大切な役割を彼らが担っています。

アソシエーションとは日本でいうNPO非営利組織とか結社のことですが厳密には日本のNPOのほうが制約が多いので一致しません。教育に関するアソシエーションだけでなく、すべてのアソシエーションは教育の場になりえます。とくにフランスにおいてはアソシエーションが大衆教育の発展の足場になっていくだろうといわれてます。

現代のような不安定な社会では自分の場所を確保するのに、就職してもあたらしい技術や知識を学び続ける必要性がでてきています。これはすでに大衆の多くが感じているとことろです。日本はまだ生涯学習のイメージというと地域の図書館やスポーツ、公民館開催のカルチャー講座などから抜けきれていませんが、最近の日本の資格検定ブームは生涯教育、の必要性をまさによくあわらしていますね。この資格取得ブームはすでにゆがんだ形で生涯教育の場として提供されています。資格を授ける学会が専門知識と学者と証明発行権を独占し学校化してしまっているからです。


私は今とは違う教育のあり方としてオルタナティブ教育に注目してきたのですが、結局研究は社会学の分野でしているので、フランス社会の一番深い闇の部分を自ら現場に行って見聞するということをしています。私のもともとの関心からするとあまり関係ないように思えますが、学びの場としてのアソシエーションと捉えるとき、今の研究とオルタナティブ教育は教授が示すようにéducation populaireという枠のなかで同じ枠にいれられるのかもしれません。アソシエーションに巻き込まれている人々は教師と生徒という関係ではなく、連帯という名の下に輪のようにつながるイメージです。民族も宗教もなく人間という共通項で人と人があつまりなにかの目標のために人々が集まり交流するところです。人々が交流するところには学びがあります。ただアソシエーションや学校以外での人それぞれが経験した異なる学びを確かなものとして認証するものはありません。こうした背景からVAEというフランスの経験認証制度は大きな希望をもって語られることが増えています。

写真はストラスブールの南にあるコルマー。







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