2010年10月19日火曜日

パリのストライキ体験

もしも、あなたがフランス留学中のパリ大大学生で、パリ郊外にすんでいるとしたら今日はこんなサバイバルな一日。

。。。。。

あなたは6時に起きてまず交通機関の本日のストライキ状況をネットでチェックします。

ちょうどいい時間につく電車は本数が少ないので座れません。日本の地下鉄並みの満員電車にゆられて小一時間。

ようやく大学の入り口にたどり着いたらなあなたは大学前にものすごい人がいるのに唖然とします。

ビラ配りの学生がいるのですぐにストライキだとわかりますが、一縷の望みをかけてひしめき合う人をかき分けて行けるところまで行ってみると椅子を積み重ねてつくったバリケードで入り口の扉はすべてブロックされています。

大学完全封鎖です。

講義室に入れないのでもちろん授業はありません。

あなたにとって椅子&テーブルバリケードもはや見慣れた光景ではあるけれど、往復3時間の無駄足をした事実をすんなり受け止められずしばし呆然とします。

しばらく他の学生と様子を伺っていると、日本語を勉強してみたい、というフランス人に話しかけられますが、今全然日本語教えるとかいう気分ではありません。あまりに質問攻めにするので適当に話を切り上げて、今来た道を戻ることにします。

また1時間半電車にゆられてようやく次が降りる駅です。

はぁー。

深いため息とともにとりあえず無事に戻れたことにあなたは一瞬安堵。

すると突然

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン! 

ホームに電車が滑り込むと、おたけびをあげながらあなたの乗っている電車の窓を外側から叩く200人位の高校生集団に目を疑います。

ドンドンドンドンドン ギャーギャーギャー 

たくさんの高校生くらいの若者が私の乗っている電車の窓ガラスを外側からたたいて何か叫んでいます。

Danger !! Danger !!

総勢200人はいます。

お勉強嫌いの若者の便乗ストだろうと察したあなたはほっとしたのも束の間、あなたの頭の中に危険予知サイレンが鳴り響き、あなたは身を硬くします。


ドアが開いたとたんに雪崩のような勢いで乗車してくるであろう高校生軍団に巻き込まれないように、ドアから少し下がったところで身を硬くしてドアが開くのを待ちます。この混乱の中で電車ホームの間に落っこちたとしたら、明日まで誰も気づいてくれないかもしれませんから。

ドアが開いて、予想通りの雪崩込み乗車に、細心の注意を払ってなんとか電車脱出に成功します。


駅を降りるとあなたは、今度は警官たちが警棒を振り回して片っ端から若者たちを捕まえている最中の光景にまたまた目を疑います。頭の頭の中の危険探知サイレンはマックスに鳴り響きます。

振り上げた警棒に間違って頭を殴られないように、また、興奮しすぎたのかヒステリーを起こしてて転がっている若者とそれを介助する女子一団を踏んづけないように、あなたは細心の注意を払って駅を出ます。


駅の周りにもまだ残軍がかなりいる近くのバス停を避けて、できるだけ安全そうなルートで1つ先の停留所からバスに乗り帰宅。

無事に帰れたことを電話で友達と報告し合いお互いの無事を確認します。

ようやく少し落ち着きを取り戻し、パソコンでメールをチェックすると学校のセクレタリアからメールが届いています。

........................
みなさん、

今日の授業は中止になりました。次回の開講は未定です。

10時30分
.........................

10時30分!!

時計を見ると現在11時です。

あなたは予知能力がある人以外は学校に行って確認するしかなかったということだけを確認します。

そしてせめてこの経験をあたかも自分が体験しているかのように読んで何か感じてもらえれば

少しは無駄足の慰めになるかも、などと思いつき、ブログに書かずにはいられません。


。。。


はい。

というわけで書いてしまいました。

ちなみに、以前もストライキについて書いている通り、私は全てのストライキについて否定的なわけではまったくありません。かなりの不便があっても、根本的に何か大事なことを変える必要があるのならば仕方ないと思っています。

多分私が読む人が体験しているかのように書きたかったのは、薄っぺらなわたしの肩書きでは伝わらない、フランスで学ぶということがどういうことなのか、というのをちょっとでもリアルに伝えたいからです。

大規模無期限ストライキのような秩序が乱れた社会の中では、普段は隠されている社会のいろいろなひずみがあらわになるもののようで、郊外から別の郊外へとパリを電車で横断していると、まるでフランスの社会を輪切りにして横から見ているような感覚になります。

これだけ突きつけられるようにフランスの厄介事を毎日次々に見せていただきますと、もしかして留学生活で大事なのは、大学の授業で何を学ぶかよりもむしろ、このフランスの社会の空気を肌で感じることに尽きるのではないかと思えてきます。そしてそこから何かを得ることができるようになることがあれば、それもすばらしい収穫なのではないかと。

ただ不便だ、危険だ、というような嫌悪や苛立ちで過ごしてしてしまうのは簡単です。実際私もその場に行ってはまさにただの殺気立った雰囲気に飲み込まれた人でしかなかったです。でもやっぱりそれだけではただの観光客と変わりないフランスしか知りえないのだと思います。多くの留学生がただ嫌悪感をあらわに書きなぐっているだけなのをよく見かけるのは、とてもよく共感できる反面、それだけで最後までフランスをもっとよく知る機会がないまま帰ってしまう人を残念に思います。だから、自分でもよくよく気をつけないと、と思って整理がてら書いています。書くことは自分の主観的な体験に距離を置いて観察するのを容易にしてくれるから、本当はもっと毎日感じたことを書き綴ることを習慣づけないといけないと思います。

今日出くわした若者たちも、危険な場所から遠く離れて観察対象としてみれば、なぜ、あれだけフラストレーションをためているのか、疑問が湧いてきます。明らかに他のストライキとは異質のフラストレーション。その彼らの鬱憤を肌で感じた、そのことが何かの理解に役立つこともあると思うのです。

ということで、毎日が同じようで退屈ならばフランス留学をおすすめしますよ-。
想像もつかないことがたくさん本当に次から次へと起こります。


ジンジャーティーでも飲んで午後は少し休むことにします。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

大変でしたね。
日本では考えられないですよ。
殆どの日本人は、眠らされているのではないかと思うくらいに。
ところで、今回はどういう理由でストライキがあったのですか?

kazoo320

非公開 さんのコメント...

もう信じられないことが次々起こるんですよ。
今回は年金問題と定年の延長についてです。日本と似ていますね。
郵便局と大学と交通が麻痺しているので今回のストはかなり普段の生活にも影響を受けております。

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