2010年8月6日金曜日

国際シッター論


国際シッター論なんていうものは公式には多分どこにもないと思うので勝手につくりました。これで講義でもしたら誰も来なさそうですが、聴衆が見えないのをいいことに全然かまわず書いていきます(笑)。


今週は午前中フランス人家庭、午後日本×スコットランド家庭(子どもは日本語より英語が優位)にてシッターが連日ありまして言語スイッチの切り替え回数がやけに多い一週間でした。パリにいるのに脳内では世界を飛び回っているような感覚になります。

子どもの面倒をみるのは全然難しい仕事じゃありませんが、このチャンネル合わせ作業というのがよいコミュニケーションをとるのにかなり重要であり気疲れする作業です。私のチャンネル合わせとは簡単にいうと、フランス家庭の子には夜パジャマを着させるときパンツは履かせないことに面食らわないで対処するとか、日本の家庭には到着直後まず必ず手を洗う気遣いをするとかです。またはフランス人の子どもが熱を出したら熱はためらいなく肛門で測り、日本人にはそんなこと思いもつかないかのようにおしとやかに口か脇の下で測ることです(笑)。

つまり大事なのは肛門で測っていい子なのかそうじゃないのかを瞬時に判断する感性(ココだけ読んだら訳わかりませんね)であります。

郷に入りては郷に従えとあるとおり、フランスの育児文化に入ってはそれに従い、日本の育児文化に入ってはそれに従うというわけです。まあこれもそんなに難しいことじゃありません。

ちょっと気を使うのが異文化融合の家庭の場合。日本の家庭といっても文化ミックスの家庭がここ仏では多いわけでその場合はその家族の「郷」はどちらの文化なのか、今後どういうふうにしていきたいのかというのを、ある程度はその場で直感で判断することが必要になってきます。私は独特な保育間と清潔観念のある日本の家族×他の文化というパターンにしばらく接していなかったので、純粋な仏家庭よりも同国出身者の場合のほうがエネルギーを消費します。

こんな風に書くと、そんなんじゃ自分らしさ、オリジナリティがないじゃないか、と嘆かれる方があるかもしれませんが、オリジナリティというのはこのチューニング作業後もしくはチューニングしながら出すものなのでこれまた別のコラムにしないといけません。ドアが開いて、いかにも清潔好きそうな日本人のお母さんだったらまず真っ先に手を洗わせてもらうのがチューニング、その後折り紙一枚でガンダムをつくれるのがオリジナリティです。

わたしはこういうスタンスで行きます!と看板を出せれば楽なんですが、大抵どの家も自分の家族のやりかたに合わせてくれる人を望みます。フランス人に至っては自分たち以外のやり方など存在しないと思っている節があります(苦笑)。シッターが趣味ならお客さんがつかなくても好きなスタンスでいればいいのかもしれないのですが、私は楽しみつつもやはりお仕事としてしているのでカメレオンスタイルが一番効率的です。こちらがチューニングしないとお客さんをふいにする可能性があるわけですから。たくさんの家族からお仕事依頼を取り付けるには変幻自在にならざるを得ません。子育て経験のない人に言われても信用できない、という方もかなりいますし今のところ大人しくしております。


異文化交流とよく言いますけれど、保育の面では異文化はなかなか交差するところがありません。育児は各家庭で作られる文化です。同国籍の人だって家庭によってかなり違う育児をしています。異文化カップルの家庭ではミックスのされ具合が違ったりしますし。実際のところ、人は家庭の文化からちょっとはみ出すものには敏感に違和感を察知し、場合によっては不愉快、不快に感じるものです。子どもを見る前に、もしくは見つつ、この文化的エチケットといえるものをクリアしていく必要が多少なりともある訳です。

意外と伝統的な家庭や同国籍カップルの家庭ほどこの異文化の違和感に好意的です。シッターを依頼するのは大抵中上流層のわりと伝統的といえる純フランス人家庭で、多くの方が日本文化に興味津々です。私の存在も好意的に受け止めてくれます。日本人がフランス家庭でシッターというのはそういう意味ではお互い悪くない相性のようです。

女子大教授の内田樹先生はゼミの生徒と面接をするときに自分にいかに波長をマッチングできるか、姿勢や話し方などからどれだけのことを感じとっているのか、というのを評価の重要な材料にするんだそうです。わたしは内田先生によい点をもらった生徒は多分保育も上手だと思います。

相手に波長を合わせるというのは異国の文化の場合だけでなく日本人同士のコミュニケーションでも無意識に多くの人がしていることですが、日本人同士だってできない人はできません。そういう人は多分子どもと上手に遊べません。

子ども好きに悪い人はいない、というのはちょっとあるかな、と思います。


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