2009年8月4日火曜日

自己肯定感を育てる眠る前の「おはなし」

夏の夜の思い出

暑くて寝苦しい夜には、母親が添い寝して、私が眠るまでうちわで扇いででくれたのを思い出します。一体いつまで扇いでいてくれるのか、本当に眠るまで手をとめないでくれるのか薄目を開けて確認しながらも、いつのまにか眠ってしまう、というのが常でした。今思うと母親への絶対的な信頼感、親の無条件の愛というのは、こういうところで感じていたように思います。実際はクーラーの冷風の方が涼しいとしても、お母さんのうちわに勝るものはないわけです。

眠る前のおはなしタイム

うちわとともにおすすめなのが、夜のおはなしです。私の母もよく昔話や、昔話をリメイクしたようなへんてこなおはなしをしてくれたものです。暑くて寝苦しい夜には、しんとした夜のひんやりとした空気が浮かんでくるようなおはなしをつくってみるのはいかがでしょう。部屋を暗くして、小さなあかりだけにするか、ろうそくをともすなどして、そのまま眠れる状態にして、子どもに添い寝して、おはなしをはじめます。

私のつくったおはなし

私は8月の後半にホームステイするベルギーのお宅の女の子にお手紙に、こんなおはなしをかきました。


                ~なつのよるのおはなし~

なつの子は ねむるよ 

つきの りんごの きの したで。


お魚と いっしょに 泳ぐよ ゆめの中。


おとうさんが さっき おふとんで 

きかせてくれた おはなし。


きんいろの おほしが ふたっつ  池に おっこちて


お魚の くびかざりに なったって。

おやすみ なつの子 また あした。

おやすみ おやすみ また あした。

(送ったものには、「なつの子」の部分に女の子の名前をいれました。)

たったこれだけの短い詩です。これでも立派なおはなしになります。この子のお家ではお父さんも自作のおはなしをつくるのを愉しんでいるので、お父さんを登場させました。シュタイナーのおもちゃのお店でみつけたポストカードの絵からイメージしたものです。


もっと短くてもっと単純でもいいので、おはなしをつくる才能がないとあきらめずに。たいそうなものでなくていいんです。大好きな人がそばで語りかけてくれる、ということ自体が子どもにとって大事です。こういう短いおはなしならば、何度か繰り返したり、でてくるものを魚じゃなくて、うさぎにしたり、くまにしたり、子どもの名前やお母さん、お父さんの名前に変えてもいいのです。

身近で起こったことをおはなしに仕立てるのも良いです。

たとえば、今日公園に行ったらすずめが水たまりで水浴びをしていたのを一緒に見たのなら、

「おふろが好きなすずめさんのおはなし」とか。


では突然ですが、ちょっとここで、おはなしミニ講座、やってみましょう。


~眠るまえのおはなしづくりミニ講座~



子どもが喜ぶおはなしづくりのポイント



ポイント1-子どもにわかる、親しみのある言葉を使うこと。


例えば、先のように公園ですずめが水浴びをしていたのに出くわしたときのことをおはなしにするとき


「今日公園に行ったらすずめが行水していました。」
 
と語るのはあまりおすすめしません。「行水」という言葉は大人はわかるけれど、幼い子は理解できずおはなしの世界にスムーズに入れないいと思います。語るほうも単なる説明になりがちで、次に続きにくいです。

「OOちゃんとお母さんが公園にいくと、すずめさんがお風呂にはいっているところでした。」


こんな風に語ってみましょう。

「OOちゃんと同じで,頭を洗うのが大嫌いでした」

とか

「お風呂にはいるきれい好きなすずめさん」に対抗してお風呂がきらいなすずめを登場させたり、

「その後、服をきて、おめかししてお出かけしました。」


というふうにしても愉しいおはなしが続きそうです。

残念ながら「水溜り」が「水溜り」にしか見えない方も、「子どもの言葉で易しく語る」のが難しい方も、ちょっと訓練すれば、きっと子どものものの見方を思い出せます。子どもを観察して、子どもの視線の先にあるもの、子どもの発言などから子どもが何を考えているか想像する、という訓練です。これさえ突破してしまえば、子どもと過ごすことは発見にみちていて、大変面白いことに気づくことができるはずです。そして、子どもがおはなしづくりの天才であるのがわかるでしょう。

それから、子どもは動くものが大好きなので、植物よりは動物、乗り物などを主人公にするのがよいです。

また、けして、教訓的ではないものにしてください。いくらやさしい声で話しても教訓は教訓と子どもにはすぐわかります。特に一日の終わりにはその子がまるごと、そのままの存在を認められているという実感を持てるお話をしてあげてください。難しいことではありません。その子が喜ぶはなしならいいのです。



おはなしをするときのポイント

ポイント1-話し手が落ち着いた気持ちで語ること ポイント2-ゆっくりと、眠りを誘うような小さな声で語ること

おはなしを親や養育者が語ってくれることに、子どもは他に替えがたい喜びを感じます。

一日、この世界を冒険してまだ心身の「波風」がおさまらない子どもたちも、大好きな人からおはなしを聞くことによってその波を静め、心地よく夢の世界に入っていけます。

ポイント2-子どもができるだけ落ち着いておはなしを聴けるようにしてあげること


例えばおはなしをはじめる前に

-部屋のカーテンを閉める
-寝室にろうそくをともす
-家族に「おやすみなさい」を言う

などを習慣にすると子どものほうでもスタンバイに気持ちが向くでしょう。

管制塔(養育者)から冒険船(子)へ「そろそろ母港へ向けて戻ってきなさい」とサインが送られるわけです。子どもを養育する人はよいサインを早め早めに出すことが求められるわけです。子どもは一日の過ごし方を予測し、計画し、実行することがまだできません。よい生活のありかたを子ども示すのは親、養育者の役割です。サインを早めに、というのは子どもの生活を導く大人の意識するとても大切なポイントですが、忘れがちなところなので、また違う機会に書くことにします。ここでは、子どもの方でもおはなしを聴ける状態をつくってあげる、ということだけ挙げておきます。


おはなしの語る準備、聞く準備が双方でできたら、あとは愉しい時間をすごすのみです。


大好きな人がおはなしをきかせてくれることを通して子どもは自分が愛されるべき存在であることを確認することができます。これが一番大切なことです。そして、こうした経験の積み重ねにより自分が愛されるべき存在であるのと同じように、他人もまた無条件で愛されていること、愛されるべき存在であることを認識します。自分を大切にし、また他人も同じように尊い存在として接することができる、そういう人に育ちます。


ですから、ここではおはなしをすすめましたが、「自分が愛されるべき存在であること」を確認できることなら、正直言ってなんでもいいわけです。

おはなしする時間がとれなければ、子どもの顔をみて「大好きだよ。」とにっこり微笑むのでもいいし、数分ひざにのせてゆらゆら揺らしてあげるんでもいいのです。

一日の終わりに毎回幸福な気持ちでいられた子どもとそうでない子、その差は今はわからなくても、大きくなったときにその子自身が感じる自己肯定感に大きく影響することでしょう。

ですから夜のこどもに語って聞かせる「おはなし」の効果は、日々実感できるほど大きなものでないとしても、確実に子どもの将来を明るくするものだといっていいでしょう。あなどるなかれなのです。

うちわで扇ぐ手間。おはなしを考える手間。確かに手間と言えば手間ですが、子どもは手間隙かけて育てるものです。その手間も、ちょっと普段の目線を変えるだけで、自分の愉しみにすることができます。もちろん、もともと子どもにおはなしをするのが大好きで愉しくてしかたないという人もいますが今回は、苦手とする人も愉しくなるように、と願って書いてみました。

正しく愛された子どもは、正しく人を愛するようになります。

子どもが「おはなしなんて、はずかしいからいい」と言う程大きく育ってしまってからではできない愛情
のかけ方です。

寝苦しい夜には涼しくなるような「おはなし」をひとつ、考えてみてはいかがでしょうか?








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