絵本屋さんに行ってきました。「こどものための本」と書いてあります。
ブリュッセルについて2日目で初めて町にでました。一人でふらっと出かけて、近所の商店街へ。ほとんどステイ先のお宅と公園のですごす日々で、いろいろ忙しいのですが、気分はすごくのんびりです。
ブリュッセルの空気はパリよりずっとのんびりしている気がするのは私だけ?
前回の滞在でみつけた絵本やさんで、絵本を一冊購入しました。本当は他にも2,3冊気になった本があったのですが、フランスに持ち帰ることを考えると、ためらってしまいました。どちらにしろフランス語の本なのでフランスで探したほうがいいということに。
絵本屋さん Par quatre chemin UCCLEというコミューンにあります。
今日選んだのは「くまくん、こわがらなくてもいいよ、ぼくがわるいやつらからまもってあげる」という意味の長い題名のついた絵本です。相棒のぬいぐるみくまくんと森へ出かける小さな男の子のお話です。物語絵本の基本構造ともいえる「ゆきて帰りし物語」となっているところや、着ぐるみのパジャマを着て森に出かけるところ、森のなかに恐ろしいけものがいる(かもしれない)という設定、イラストのタッチ、どれもモーリスセンダックの「かいじゅうたちのいるところ」と同じで、雰囲気がとてもよく似ています。
はじめは僕が守る、と息巻いていたのに、だんだん、森にいるかもしれないわるいけものたちがこわくなってきて、くまくんに頼るようになり、少しずつくまくんが大きくなっていく様は、子どもの自立心と依存心の有り様を非常によくあらわしています。このくまくんの大きさが変化するというのがこの本のファンタジーです。この絵本のオリジナリティでもあります。絵には余分なところがなく、やさしく落ち着いた色使い、こまかな表情も描いており、子どもに共感されそうな絵本だと思います。ただ、ひとつだけ残念な点があります。そのせいで、この絵本は名作にはなれないだろうと思ってしまいました。この男の子がどうして森に行くことになったのか、そこが描かれていないのです。どうして眠る直前の男の子がわざわざ森にひとりででかけていくのか?そこが描かれていないのです。これは大きな描き落としだと思います。子どもが共感できるためには、物語の始まりに、子ども(とすべての読者)が納得する理由がきちんとなくてはなりません。「かいじゅうたちのいるところ」にはしっかりとこの点が描かれています。これが名作たる由縁でしょう。物語には、物語の始まる理由がきちんと描かれているからこそ、しっかり帰ってこられるのだと思っています。本当に良い絵本は絵やストーリーの一部のみからでは判断できず、すべての必要な要素が一冊にきちんと盛り込まれているかどうかをしっかり見定めないといけないという良い例だと思います。
でも、せっかく他の面では良い絵本なので、お手伝いしている育児サークル(外遊びの会)で子どもたちに是非読みたいです。物語の始まりの部分におはなしを付け足して読んでみることにしようと思います。作者の作品であるひとつの完成した絵本に生意気な試みをして申し訳ない気もしますが、絵本は子どもの文学作品の一つであると同時に子どもと大人が一緒に楽しむ道具の一つとも言ってよいのではと思っています。足りない要素があれば足して、この本がもっと活きるようにすればよい。そう思います。
絵本の作者のHP
Martha Alexander
http://www.geocities.com/scbwihawaii/members/alexander-m/alexander_m.html
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